巻四 (64)式部大輔実重、賀茂の御正体拝み奉る事

  これも今は昔。 式部大輔・実重(さねしげ)は、他の人とは比較できないほど頻繁に、 賀茂神社へ参詣していた。 けれど、前世からの巡り合わせが悪く、大きな御利益に預かることはなかった。  さてある日。 実重は、夢で、賀茂の大明神が、「また実重が来おったぞ」 と、嘆かれるお姿を見た。  これを受けて実重は、何と…

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『班女塚伝説』

京都のビジネス街にある小さな神社 京都の商業地区の中心地である下京区室町。繊維問屋が多く集まるこの界隈は、行き来する人や車の出入りで日中は賑やかなビジネス街ですが、そんな街の一角に赤い鳥居の小さな神社があります。街の雰囲気からすると、そこにあることがそぐわないような、妙に違和感がある神社ですが、その標札に目…

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第48話~しかばねをねらう娘

 むかしむかし、ある山のふもとに、お寺がありました。 ある雨のふる晩のこと、このお寺の戸をたたくものがありました。「だれじゃ、いまごろ」 和尚さんがしぶしぶ起き出していくと、そこにはきれいな娘がたっていました。「はて、どんなご用かな?」「はい、この間、こちらでとむらっていただいた人のしかばねをひきとらせてくだ…

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わすれ草

「わすれー草、わすれー草は、いれらんかえー」と、花売りの売り声が聞こえてきました。 わすれ草とはユリ科の多年草で、葉は細長くて、夏に大きなユリに似た橙赤色の花を一日だけ咲かせます。「ほう、わすれ草とは珍しい名だ。おい、どんな草か、わすれ草を見せておくれ」「はい、ただいま」「何だ、葉っぱばかりしげって、つまらぬ草じ…

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