さてまたあるとき。 賀茂の臨時祭の余興に、また天皇さまの御前で、 神楽が催されることになった。
行綱が、兄に向って言うには、「人長から呼ばれ、竹台のもとに寄って、さあ騒ぐぞという時に、兄者は、『あれは何をする者ぞ』 と囃してくだされ。そしたら私は、『竹豹(ちくそう)ぞ、竹豹ぞ』 と言いなが…
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これも今は昔。 神楽の脇役、陪従(べいじゅう)といえばこんな奴ばかりだが、 世に例の無いほどのふざけ名人がいた。
堀河院の御時、内侍所で御神楽が催された夜、「今夜は何か珍しいことをしてみせよ」 という仰せがあったので、担当役人は家綱を呼び、この仰せを申しつけた。 家綱、承知すると、さっ…
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むかしむかし、沢根(さわね)というところに、駄栗毛左京(たくもさきょう)という名の侍がいました。 ある年の夏、左京(さきょう)は所用で河原田(かわはらだ)まで行き、帰りはもう夕暮れ時になっていました。 馬にまたがった左京は、真野湾(まのわん)のかなたに沈んでいく太陽をながめながら、「おおっ、なんと美しいお天…
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むかしむかし、旅の商人(しょうにん)が、宿屋を見つけました。 雨のしょぼしょぼふる、暗闇の晩のことです。「一晩、とめてください」 商人がたのむと、「今日は満室なので相部屋になりますが、よろしゅうございますか?」「はい、かまいませんよ」「そうですか。では」 商人がとおされた部屋には、旅のお坊さんがいました…
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ある殿さまの家来に、大変気のきく男がいました。
殿さまはその男の事を、客が来るたびに自慢します。「あの男の気がつくこと、気がつくこと。 朝起きると、すでに洗面の用意が出来ておる。
そして顔を洗っている間に、茶をくんで来てくれる。
たばこを吸いたいと思えば、目の前に、すーっと、たばこが出てくる。
…
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