巻五 (76)仮名暦あつらへたる事

   これも今は昔、 ある人のもとに、生半可な女房がいた。  人に紙をもらい、近在の若い僧侶に、「ひらがなの暦をくださいませ」 と言えば、若い僧は、「造作もない」 と言って、書いて渡した。  始めの方はうるわしく書いてあり、 神、仏によし、外出悪し、悪日慎め……と丁寧に記されていたが、 その…

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第12話~馬にされた若者

 むかしむかし、和尚さんが六人の若者をつれて、山道を越えていきました。 ところがどこで道をまちがえたか、行っても行っても山は深くなるばかりで、とうとう日がくれてしまいました。「弱ったぞ。こんなところでは、野宿も出来ないし」 一行がなやんでいると、むこうにあかりが見えました。「しめた。あそこに行って泊めても…

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第60話~幽霊の泣き声

 むかしむかし、あるところに、三太(さんた)という男がいました。 三太には近くの村へ嫁入りをしている、およしという妹がいます。 そのおよしが、とつぜん病気でなくなったのです。 さっそく嫁入り先にかけつけて、無事に葬式もすませました。「やさしい妹だったのに・・・」 その晩、およしのことを考えながら、村はずれ…

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めじるしの犬

 長い間、山里から出たことがないおじいさんがいました。 ある日、おじいさんが家族に言いました。「生きているうちに、一度、京の見物をしたいもんじゃ」 すると、家族はお金を工面して、おじいさんを京都見物に出してやる事にしたのです。「いいかい、おじいさん。 京の町は、どれも家のつくりが似ていますからね。…

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