巻六 (84)世尊寺に死人、掘出す事

    今は昔。 世尊寺の建っている場所は、桃園大納言がお住まいになっていたところで、 大納言が、近衛大将となる宣旨を受けた際、 お祝いの饗応のため屋敷を修理し、大いに祝った場所であった。 だが大納言自身は、その二日後、にわかに亡くなってしまった。  主人の急死に、家来どもはみな立ち去り、 屋敷には…

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静御前

「源義経」(みなもとのよしつね)の側室として知られる「静御前」(しずかごぜん)。その半生は謎に包まれた部分が多い人物です。謡曲(能の詞章や脚本部分、及び声楽部分のこと)の「二人静」(ふたりしずか)や、浄瑠璃の「義経千本桜」の主題となった静御前の生涯を、歴史書「吾妻鏡」(あずまかがみ/あづまかがみ)などを通して…

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第68話~お豊虫(とよむし)

 むかしむかし、伊豆七島の八丈島(はちじょうじま)は、罪をおかした人たちが島流しにされたところでした。 ある年の事、この島に放火の罪で、お豊という十五歳の少女が江戸から船で送られてきました。 放火は大罪なので、五年、十年と、お豊の島でのくらしが続きました。 島には毎年一度だけ、江戸から御用船(ごようふね)とよ…

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聞いた名前

 家を探して、うろうろしている人がおりました。「もし、ちょっとお尋ねしますが、このあたりに、福徳屋徳右衛門(ふくとくやとくざえもん)さまという人の家はありませぬか」 すると小僧は、「はあ、福徳屋徳右衛門。 うーん、聞いた事がある名前だが、どこだったかなあ? ねえ、番頭(ばんとう)さん、知りませんか?」「いいや。 しか…

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