大江山の鬼

日本の鬼は、時にナマハゲのように神を思わせ、酒呑童子のように人のようにもなり、 醜悪怪異なおばけともなります。 そんな鬼の特徴をよく示しているのが「 こぶとり爺さん」の鬼です。鬼はコブを取るという超能力を持っているのです。そして、良いお爺さんのコブは取ってやる。 悪い爺いさんには コブをくっつける。昔の人は鬼は人の心次第で、恩恵も与えてくれるし、懲罰 も与えるとみていたのでしょう。多神教国· 日本ならではの鬼であり 、欧米の悪魔と大きく違う点です 。
酒呑童子(しゅてんどうじ) 大江山の鬼編
酒呑童子は他の多くの鬼たちと一緒に大江山に住んでいました。
頼光は配下の四天王と呼ばれる 渡辺綱 ·坂田金時·確井貞光· ト部季武、及び藤原保昌 ( 後世では彼の名前は消えてしまった)及び 彼らの家来数名を連れ 大江山に向かいました。( 坂田金時は「 足柄山の金太郎」 として有名。 渡辺綱は一条戻り橋や羅城門でも鬼に遭遇しています。)
途中一行は 3人の老翁に出会います。 3人は実は 石清水八幡 · 住吉神社 ·熊野権現の化身でした。。 老人たちは 頼光らに、隠れ蓑と神酒を授けました。 隠れ蓑 はそれを着ると鬼には姿が見えなくなり 、人種は人が飲めば力がつくものの 、 鬼が飲むと 神通力を失う 、というものでした 。そして、老翁たちは 頼光らに 、 その姿では警戒されるので、 山伏の姿に 変装すると良いと助言しました。( 神様が4人のバージョンでもある。 もう一人は日吉山王。 また神々がこの後 同行するバージョンもある )
そこで頼光らは老翁たちにもらった山伏の衣装に着替え 乗ってきた馬などは家来たちに連れて帰らせ 、 6人だけで山奥へ 分け入って行きました 。
やがて 一行は川で血のついた布を洗う老婆 (一説では若い娘 )に出会いました。
老婆は頼光たちを見ると「 ここは鬼の里です。見つかると大変ですから、お逃げなさい」
と言います。しかし頼光 らは「 我々はその鬼を退治に来たのだ」と告げ、老婆に、あなたはどういう方なのですか?と問います。 すると老婆は涙を流しながら、身の上を語りました。
それによると、老婆は元は都の貴族の妻でしたが、鬼たちにさらわれたのだといいます。
しかし痩せていたため、美味しくなさそうだ、
ということで食べられるのを免れ、鬼の神通力 で200年の寿命を与えられ、こうして下働きをしているのだということでした。 そして老婆は頼光たちに鬼の城ヘの道筋や鬼の城の中の様子などを教えました。
やがて、頼光たちは鬼の城に到着道に迷ったので泊めて欲しい、と言いました。
鬼たちは承知して、一行中に入れます。すると頼光は止めてくれるお礼に、と酒を差し出し、鬼たちもそれを喜んで酒盛りが始まりました。
大将の酒呑童子、その他四天王の星熊童子·虎熊 童子·熊童子· (他に、いくしま童子という名前も見られる)、そして近所の山から来ていた茨木童子もいました。酒盛りが進むに連れ、鬼たちは上機嫌になり、やがて酒呑童子は自分の身の上を語り始めました。
「 自分は最初は比叡山に住んでいたが、伝教大師が 延暦寺を建てて結界を張ってしまったので居れなくなり、九州の英彦山に移った、その後伯耆大山· 白山· 館山· 富士山と移り、最後にはこの山に移ってきた。 最近は伝教大師· 弘法大師のような強力な術者がいないので、都に風を起こしたりして楽しんでいる」
やがて夜になりました。頼光らは起きだして老婆に聞いていた鬼の寝床に向かいます。そして老翁たちにもらった 隠れ蓑をつけて 酒呑童子のそばに近寄り、 一気に首をはねました。
酒呑童子の首ははねられたまま頼光に飛びかかり、その兜に噛みついたまま動かなくなりました。酒呑童子は最後に「 おのれ図ったか。鬼は決して人を騙したりしないものを」と言ったともいいます。
続いて頼光たちは他の鬼たちも次々と倒し全滅させました。そして鬼の亡骸を火葬にすると山を降りました。途中、老婆と出会った川のところに人の骨が倒れていました 。あの老婆が、鬼の神通力がなくなり、本来の姿に戻ったものでしょう。頼光たちは老婆の骨を丁寧に葬り都へと帰って行きました。
一説によると酒呑童子の首は 坂田金時が「 証拠として都に持ち帰りましょう」と言ったため、持って帰ろうとしたのですが、都の近くの老ノ坂 まで来るとふいに首が動かなくなってしまいました。そこでやむなく酒呑童子の首をそこに埋めたといいます。現在その地は「首塚 明神」として祭られています。 (この地に居た地蔵様が「 不浄の首を都に入れることはまかりならぬ」と言い、それから動かなくなったという説もあります。また 都まで無事持ち帰られたという説もあります)
次回··· 酒呑童子(伊吹山編)
See You Again by-nagisa
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