酒呑童子の子(福知山市雲原の民話)

酒呑童子を退治した源頼光は、岩窟に捕えられていた婦女をすべて解放した。しかし、その中の伊予掾経友の奥方という女は心を病んでおり、その上 酒呑童子の子を身籠っていたので故郷に帰ることもできず、雲原南東の集落に住み着いた。里人はこれを哀れんで食物を与えたり、衣服を恵んでいたという。
やがて、女は男児を産んだ。これが鬼童である。鬼童は生まれながらにして歯が全て生え揃い、食べられる物は何でも口に入れたという。7,8歳になって里の大人以上の力を持つようになった鬼童は毎日のように野山を駆け巡り、イノシシやシカなどを見つけては石を投げてこれを獲り、肉を裂いて貪り食った。そのため、里人は鬼童を恐れて避けるようになったという。
里人から見放された鬼童は食べ物に困るようになり、いつしか里から姿を消してしまった。その後、鬼童は都へ行き、父の仇である源頼光の命を狙うようになった。ある日、鬼童は市中の市原野という場所で、牛の死骸の腹に隠れて頼光を討とうと構えていたが、頼光の家臣に見破られてしまい その場で斬り殺されてしまったという。
その頃、鬼童の母は病に冒されて日々衰弱しており、哀れんだ里人は今まで以上の手助けをしたが、容態は回復すること無く、ひっそりと死んでしまった。これは鬼童が殺されてから100日足らずのことである。鬼童の母の亡骸は、里人によって集落の小高い七曲りの片隅に葬られ、墓標として山石とサヤゴの苗木が植えられた。
このヤサゴは大きく育ち、墓石を包み込むかのように根を張って、周囲の植物も助けるかのように大きく覆った。これを見た里人は鬼童の母の精が来たのだろうと言い、鬼童の母が生前美しかったことから桜御前の墓と名付けて、供花や供物を墓前に供えるようになったという。
次回、
伊吹弥三郎 ―
酒呑童子の父とされる伊吹山の鬼
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