ためしぎり


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 ある武士が、新しい刀を買いました。
「何とか、切れ味をためしてみたいが」
 そこで友人に相談しますと、友人が言いました。
「そんな事なら、橋の上のこじきを切ってみれば、よかろうに」
「うむ、それは名案(めいあん)。さっそく、今夜にもためしてみよう」
 そこで二人は暗くなるのを待って、橋へと出かけました。
 やがて橋にさしかかると、中ほどに、うまいぐあいにこじきが寝ています。
「うらみはないが、命をもらうぞ」
 武士は刀を抜くと、月の光をたよりに振り下ろしました。
「えいっ!」
 そして二人は、一目散に逃げました。

 さて、だいぶ走ってから、二人は足を止めました。
「おい、もう逃げなくともよかろう」
「そうだな。ところで切れ味は、どうだった?」
「おお、なかなかの切れ味でな。そのまま橋げたまで切ってしまったわ」
「それはすごい! それなら一度戻って、見届けてこよう」
 二人は橋のところに引き返すと、切られたこじきのそばに寄りました。
 するとこじきは起き上がって、二人に文句を言いました。
「やいっ! また棒で叩きに来たのか!」
 武士の新しい刀は、とんでもない、なまくら(→切れ味の悪い刃物)のようでございます。

♪ちゃんちゃん

(おしまい)





See You Again  by-nagisa

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