おれがいない


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 むかし、一人の役人が罪人の坊主をごそうするための旅をしておりました。
 途中の宿屋で、この坊主が言いました。
「お役人さま。もうすぐ江戸でございます。お世話になったお礼に、これでもどうぞ」
 坊主は自分のお金で酒を注文すると、役人にたらふく飲ませて役人を酔いつぶしてしまいました。
 そして坊主は役人の頭の毛を丸坊主にしてしまうと、その首になわをかけて逃げてしまったのです。
 さて、しばらくすると役人が目を覚ましました。
「ああ、良い気持ちだ。うまい酒であった」
 そしてまわりを見ると、坊主がおりません。
「しまった。逃げられたか」
 役人はあわてて外に飛び出そうとして、頭が涼しいことに気づきました。
 頭に手をやると、自分が坊主頭で、おまけに首にはなわまでかけてあります。
「おおっ、坊主はおれであったか」
 役人は大声で言ったあと、ふと首を傾げました。
「さて、罪人の坊主はここにいるが、役人のおれは、どこに行ったのだろう?」

♪ちゃんちゃん

(おしまい)




See You Again  by-nagisa

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