むかしむかし、江戸の浅草花川戸(あさくさはなかわど)に、道安(どうあん)という医者が住んでいました。 ある日のこと。《伝法院(でんぽういん)の広間(ひろま)で、百物語(ひゃくものがたり)をもよおすので、ぜひご出席いただきたい》と、いう、つかいがきました。 伝法院(でんぽういん)といえば、浅草境内…
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むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。 ある日、おじいさんはとおくの畑へいったのに、大事な弁当をわすれてしまいました。 そこで、おばあさんが後から弁当を持って出かけていくと、とちゅうのくらい森で、「とっつくぞう~、ひっつくぞう~」と、おそろしい声がきこえてきました。 おそろしくな…
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むかしむかし、ある町はずれに、古い空家がありました。 いく年か前までは、お金持ちがすんでいましたが、今はあれほうだいです。 やねのかわらはずりおち、のきにはクモの巣(す)がはりめぐらされ、みるかげもありません。 ところが、この空家から夜になると、ゆうれいが出るとのうわさがひろがりました。「それがまあ…
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むかしむかし、あるところに、空家がありました。「空家のままでは、もったいない」 大家さんが、《貸し家(かしや)》のふだをはると、すぐにかりる人がみつかりました。 ところが二、三日すると、大家さんにあいさつもなく、かりた人がでていってしまいました。 また、空家です。 大家さんがあらためて、…
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むかしむかし、あるところに、たいそうおくびょうな男がいました。 夜になると、ひとりでは便所にもいけないありさまです。 いつも夜中に、おかみさんをおこしては、「化け物がでるかもしれん、すまんが、いっしょにきてくれや」と、たのむのでした。「化け物など、おりゃあせんのに、いい年をして、ほんとにこまったもんだ」 お…
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むかしむかし、あるところに、ゆうれいが出るとうわさされるお寺がありました。 そのゆうれいは二人で、お互いに話し合うというのです。「そんなばかな。ゆうれいが二人で、おしゃべりするなど。・・・よし、おれが、この目でたしかめてやる」 うわさをきいて、気の強いひとりの男が、おはかにしのんでいきました。 …
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むかしは、どこの家の台所にも、土でできた、へっついという道具がありました。 ひらたくいえば、かまどのことです。 これがないと、ごはんがたけません。 さて、ある町に、いせいのいい大工(だいく)さんがいました。 あるとき、この大工さんの家のへっついが、こわれてしまいました。 でも、新…
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むかしむかし、ある村に、ひとりぐらしのおばあさんがいました。 むすめをとおくの町へお嫁にやってしまってから、長いことひとりぐらしです。「このあいだの、むすめの手紙では、からだがおもわしくないといっていたが、いまごろ、どうしておるかいのう?」 あるばん、おばあさんが心配していると、いつかえってきた…
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日光(栃木県)の二荒山神社(ふたらさんじんじゃ)に、高さ六尺(約百八十センチメートル)ほどの唐金(からかね→青銅の事)のとうろうがあります。 このとうろうは、むかし、この近くの鹿沼(かぬま)にすんでいた鹿沼権三郎入道教阿(かぬまごんざぶろうにゅうどうきょうあ)という人が寄進(きしん→…
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むかしむかし、江戸(えど→東京都)の侍(さむらい)が仕事でよその国へ行くとき、一人の男を召使いとしてやといました。 その男が実によく気のつく男で、どんな用事をいいつけても、てきぱきとかたづけてくれるのです。 侍はこの男が気にいって、いつか正式の家来にしたいと思っていました。 さて、旅の途中、美濃の国(み…
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むかしむかし、丸岡城(まるおかじょう)が築城(ちくじょう→城を建てること)された時のお話です。 どうしたことか、丸岡城は何度建てかけても、城がくずれてしまって建ちませんでした。 お城を建てる責任者は、最後の方法として人柱(ひとばしら)を立てることを考えました。 そして、人柱の希望者をつのりました。 でも、自…
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むかしむかし、会津(あいづ→福島県)の殿さまのもとに、直江山城守兼続(なおえやましろのかみかねつぐ)という家老(かろう)がいました。 ある時、三室寺庄蔵(さんむろじしょうぞう)という山城守(やましろのかみ)の家臣(かしん)が、ささいなことから家来の一人を殺してしまいました。 それを知った、殺された家…
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むかしむかし、ある村はずれに景色のいい浜辺がありました。「おおっ、なんてすばらしいながめだ」 たまたまそこを通りかかった男が、ふと前を見ると、若い女がひとりで、松の木によりかかって海を見ていました。 顔はよくわかりませんが、そのうしろ姿は美くしく、男はひとこと声をかけたくなりました。(なんていおうか…
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むかしむかし、一そうの船が、荒波(あらなみ)のなかを走っていました。 ながい航海(こうかい)もおえて、まもなく港につくというころ、晴れわたっていた空のゆくてに、ポツンと一つ、点のような黒雲があらわれました。 雲は陸地のほうから、しだいしだいに、こっちへやってきます。 船に近づくにつれて、黒雲は、だん…
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むかしむかし、たびの男が、ひとりでさみしい山みちをあるいていました。「ああ、日はくれるし、はらはへるし、こころぼそいことになってしまった」 男がトボトボと歩いていくと、どこからともなく、 ショキショキ、ショキショキと、アズキをとぐような音がしました。「やれやれ、このあたりに家があるらしい。うちのひと…
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むかしむかし、ある村に、みすぼらしいたびの坊さんがやってきました。 日もくれてきたので、どこかにとめてもらわなくてはなりません。 坊さんは、庄屋(しょうや→詳細)さんの門をたたきました。「どうか、ひとばん、とめてください」 すると、庄屋さんは、「きのどくだが、とめられん。じつは、このあいだ、たびの男…
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むかしむかし、あるところに、すぐにけんかをする、あばれもののばくちうちがいました。 大きなからだの力持ちですが、はたらきもしないで、「なにかええことはねえもんかなあ」と、まいにち、ブラブラしています。 ところがある日、ばくちうちは、「おれもこの土地さえでたら、ちったあ運がまわってくるかもわからん」と、考えて、ヒ…
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むかしむかし、信濃の国(しなののくに→長野県)に、満願寺(まんがんじ)という小さな山寺がありました。 このお寺には夜中のうしみつ時に、かならず山のお堂に明かりをつけにいくという、古くからつたわっているしきたりがありました。 このお堂の明かりは高いところに灯(とも)されるので、ふもとの村からもよく…
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むかし、江戸の町に、やたいの酒うりがいました。 ひや酒(つめたいお酒)や、かん酒(あたためたお酒)をうるのです。「いまにも雨がふりだしそうで、いやなばんだなあ。まとまったお金があれば、ちゃんとした店でしょうばいができるのに」 酒うりの男がぼやいていると、「ちょっと、のませてくれんかね」 しらがのめだつ、…
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むかしむかし、陸奥の国(むつのくに→青森県)のある村に、万次郎(まんじろう)という、とても気のよわい男がいました。 村のだれかがなくなると、今度は自分かもしれないと、いつもビクビクしているのです。 ある日万次郎は、死んだおじいさんから聞いた話を思い出しました。「一月十六日のま夜中に、人に見つからない…
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