むかしむかし、滝のあるふち(→川の深いところ)に、一匹のカッパが住んでいました。 このカッパは、頭の上の皿をどんな物にでも変えられるという、不思議な力を持っています。 ふちのそばで美しい花を咲かせたり、大きな魚にして、それを人が捕ろうとしたとたん、腕をつかんで水中深く引っぱり込んでしまうのです。 このカッパ…
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むかしむかし、回竜(かいりゅう)と言う、旅のお坊さんがいました。 たまたま甲斐の国(かいのくに→山梨県)へ来た時、山道の途中で日が暮れてしまいました。「仕方がない。今夜はここで野宿するか」 回竜は元は名のある侍で、怖い物知らずです。 ゴロリと道ばたの草の上に寝ころぶと、そのまますぐにいびきをかき始めました。…
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むかしむかし、ある村に、おばあさんと美しい娘が二人で暮らしていました。 ある年の田植えの季節に、おばあさんは町へ買い物に出かけました。 帰りに田んぼのあぜ道を歩いていると、ヘビがカエルを追いつめて、今にも飲み込もうとしています。「これこれ、何をする。許しておやり。欲しい物があれば、わしがやるから」 カエルを…
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むかしむかし、ある町に、色白で気の弱い、新兵衛という侍がいました。 弓も刀も駄目で、仲間からは腰抜け呼ばわりされていました。
さてこの町に、元は町一番の長者屋敷だったのですが、今は荒れ果てて幽霊が出るとの噂の屋敷がありました。 ある日、仲間の侍たちから、「どんなに強い侍でも、一晩とおれんというぞ。お主なんか、門をく…
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むかしむかし、急ぎの仕事で箱根の山を越えようとする、二人連れの飛脚(ひきゃく)がいました。♪えっさ、ほいさっさ♪えっさ、ほいさっさ やがて日も西に傾き、月が街道をほんのりと照らしました。「おい、見ろよ。いい月だぜ」「うん。それにしても、前の方から、にぎやかな声が聞こえてこないか?」「ああ、聞こえる、聞こえる…
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むかしむかしのある寒い冬の夜ふけ、村はずれにある久左衛門(きゅうざえもん)というお百姓の家の戸を、 トントン、トントン。と、叩く者がいました。 ふとんにくるまってねむっていた久左衛門は、目を覚まして、(誰だ? こんな夜ふけに)と、起きあがると、「どなたですかな?」と、戸口へ声をかけました。 すると、戸のむこうから若…
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むかしむかしの、寒い寒い北国でのお話です。 あるところに、茂作(しげさく)とおの吉という、木こりの親子が住んでいました。 この親子、山がすっぽり雪に包まれる頃になると、鉄砲を持って猟に出かけていくのです。
ある日の事、親子はいつもの様に雪山へ入っていきましたが、いつの間にか、空は黒雲におおわれて、吹雪(ふぶき)…
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むかしむかし、都のはずれに、たいそう貧乏な男が住んでいました。 ところがその男の知り合いが、とても出世して遠い国のお殿さまになったのです。 そこで男は、そのお殿さまの家来として、ついて行く事になりました。
「これでやっと、自分にも運が向いて来たぞ」と、喜んでみたものの、男には旅の支度をする金さえありません。 …
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むかしむかし、旅の侍が一人、村はずれのさみしい野原にさしかかりました。 このあたりには、『朱の盤(しゅのばん)』と呼ばれる妖怪(ようかい)が出るとのうわさです。
「ああ、日は暮れてくるし、心細いなあ。化け物に会わねばよいが」 侍が足をはやめると、「しばらく、お待ちくださらんか」と、後ろから、呼び止める者が…
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むかしむかし、羽後の国(うごのくに→秋田県)の大館(おおだて)に、長山武太夫(ながやまぶだいゆう)という剣の名人がいました。 その名は国中に知れわたり、武太夫の道場には、全国から入門を願い出る者が大勢集まってきました。 武太夫は気立ての良い奥さんと数多い弟子に囲まれて、とても幸せでした。 ところが武太夫には…
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むかしむかし、あるところに、大きな池がありました。 水草がしげっていて、コイやフナがたくさんいます。 でも、どういうわけか、その池で釣りをする人は一人もいません。 それと言うのも、ある時、ここでたくさんフナを釣った親子がいたのですが、重たいビク(→さかなを入れるカゴ)を持って帰ろうとすると、突然、池にガバガ…
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むかしむかし、長崎市の西坂町(にしさかちょう)にある本蓮寺(ほんれんじ)に、日親(にっしん)という坊さんがやってきました。 このお寺は元々、サン・ジュアン・パプチスタ寺といい、キリシタンの人たちがお祈りをする教会で、身寄りのない子どもたちやお年寄りたちの世話もしていました。
ところが天正十五年の事。 天…
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むかしむかし、ある田舎に、たいそうな長者(ちょうじゃ)がいました。 長者にはきれいな一人娘がいて、もう年頃です。 そこで長者は、娘に婿さんを取る事にしました。 すると、そのうわさがすぐに広がって、「よし、自分こそが、婿になろう」「いいや、おれこそが、長者の娘婿にふさわしい」と、婿さんの希望者(きぽうしゃ)が、大…
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むかしむかし、越前の国(えちぜんのくに→福井県)に、原仁右衛門(はらにえもん)という人がいました。 家には奥さんと二歳になる男の子がいて、若い女中さんを一人やとっていました。 ある時、仁右衛門は仕事で、京都へ行く事になりました。 そこで奥さんに、「わしが戻って来るまで、ふた月はかかると思うので、子どもの事を…
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むかしむかし、ある村に与作(よさく)という男がいました。 大変な恐がりで、長いへちまがぶらさがっているのを見てドッキリ、草がざわついてもドッキリ。 ネズミが現れると、腰を抜かして、「おかか、助けてくれろっ!」と、言った次第です。「やんれ、こんなでは、この先どうなるもんだか」と、おかみさんもなげいておりました…
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むかしむかし、日光(にっこう)の寂光寺(じゃっこうじ)というお寺に、覚源上人(かくげんしょうにん)というお坊さんがいました。
ある日の事、上人(しょうにん)は、横になって休んだままの姿で死んでしまったのです。 しかし、上人の体はまるで生きているように温かく、肌も普通の色です。 確かに息もしていませんし、…
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むかしむかし、江戸に、岡田弥八郎という侍が住んでいました。 弥八郎には、ただ一人の娘がいて、その名をしずと言います。 しずは朝顔の花が大好きで、十四才の時に朝顔のつぼみを見つけて、こんな歌をつくりました。♪いかならん♪色に咲くかと♪あくる夜を♪待つのとぼその♪朝顔の花 父はこの歌をたんざくに書いて、妻に見せ…
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むかしむかし、世の中が豊臣から徳川に移ると、佐賀の殿さまも、竜造寺築前守から鍋島直茂に代わり、裏舞台では両家の激しい権力争いが火花を散らしていました。 三代目、鍋島家茂が城主の頃、ご城下に竜造寺家の跡継ぎである又一郎という目の見えない若侍が、母親のおまさとひっそり暮らしていると、お城から殿さまの碁の相手に来るよ…
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むかしむかし、大阪の町に、河内屋惣兵衛(かわちやそうべえ)という人がいました。 惣兵衛(そうべえ)の屋敷には、年を取った一匹のぶちネコがいます。 このネコを一人娘のお千代(ちよ)は、まだ子どもの頃から大変可愛がっていました。 お千代のそばにはいつもネコがいるので、町の人は、「お千代の婿さんは、ネコだよ」と、…
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一八五五年(安政二年)十月二日、江戸の町は安政(あんせい)の大地震(マグニチュード6.9。死者四千人)という大地震に見舞われましたが、この一日前のお話しです。
江戸の下町に住む中村大作(なかむらだいさく)という人が、家の手伝いをしている十介(じゅうすけ)を連れて用事の為に千葉へ出かけていきま…
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