むかしむかし、ある屋敷に、とてもネコの好きな女中さんがいました。 この女中さんが可哀想な捨てネコを拾ってきて飼い始めたのですが、この屋敷のおかみさんはネコが大嫌いで、ネコがそばに来ただけでも殴ったり、蹴飛ばしたりします。「どうして、ネコなんか飼うんだい! 早く追い出しておしまい!」 ところが、おかみさんにいくら…
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むかしむかし、京の都の五条京極(ごじょうきょうごく)に、荻原新之丞(おぎわらしんのじょう)という男が住んでいました。 まだ若い奥さんに死なれた為、毎日がさびしくてたまらず、お経をよんだり歌をつくったりして、外へも出ないで暮らしていました。
七月の十五夜の日の事。 夜もふけて道ゆく人もいなくなった頃、二十才く…
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むかしむかし、因幡の国(いなばのくに→鳥取県)の町に、小さな宿屋がありました。 ある冬の晩の事。 この宿屋に泊まった男が、真夜中に人の声がしたので目を覚ましました。「兄さん、寒かろ」「お前、寒かろ」 それは、ささやくような子どもの声です。「はて、どこの子どもだろう? この部屋には、誰もいないはずだが」 男は布団…
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今から三百年ほどむかし、江戸の四谷左門町(よつやさもんちょう)に、お岩という家柄の良い娘がいました。 ですが気の毒にも、五歳の時に疱瘡(ほうそう→天然痘)をわずらい、それはみにくいあばた顔になってしまいました。 父親は年頃になった娘をあわれに思って、一人の浪人を連れてきました。 長い貧乏暮しが嫌になった浪人は、…
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むかしむかし、旅から旅を続ける一人の男がいました。 ある日の事、日が暮れてきたので、男は浜松(はままつ→静岡県南西部)の近くにある村の宿屋に泊まる事にしました。 その夜はあいにく、泊まり客がたくさんいました。 そこで男は美しい女の旅人と一緒に、一つの部屋のまん中にびょうぶを立てて、一夜を過ごす事になりました…
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むかしむかし、あるところに、仲の良いおじいさんとおばあさんがいました。 二人は、ある晩、「なあ、ばあさんや。どちらかが先に死んだら、お墓には入れないで家の壁に塗り込めよう。そうすれば、いつまでも一緒にいられる」「そうですね。そして死んだ者が、壁の中から呼んだら、必ず返事をする事にしましょう」と、約束しました…
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むかしむかし、あるところに、子どものいない夫婦がいました。「子どもが欲しい、子どもが欲しい」と、思い続けて毎日仏さまに願ったところ、ようやく玉のような男の子を授かったのですが、病気になってしまい、五歳になる前に死んでしまったのです。 夫婦はとても悲しんで、毎日毎日、泣き暮らしていました。 でも、ある日の事。「い…
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むかしむかし、下関(山口県)に、阿弥陀寺(真言宗の寺)というお寺がありました。 そのお寺に、芳一という、びわひきがいました。 芳一は幼い頃から目が不自由だった為に、びわのひき語りをしこまれて、まだほんの若者ながら、その芸は師匠の和尚さんをしのぐほどになっていました。 阿弥陀寺の和尚さんは、そんな芳一の才…
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むかしむかし、ある村に、一軒のアメ屋がありました。 ある年の夏の事、夜も遅くなったので、アメ屋さんがそろそろ店を閉めようかと思っていると、 トントントントンと、戸を叩く音がしました。「はて、こんな遅くに誰だろう?」と、アメ屋さんが戸を開けてみますと、一人の女の人が立っていました。「あの、アメをくださいな」「あっ…
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むかしむかし、ある村で、お葬式がありました。 昼間に大勢集まった、おとむらいの人たちも夕方には少なくなって、七、八人の若者が残っただけになりました。「せっかく集まったんだ。寺のお堂を借りて、『百物語(ひゃくものがたり)』をやってみねえか?」 一人が言い出すと、「いや、おとむらいの後で『百物語』をすると、本当のお化けが出る…
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