ある日、お調子者の松さんが、隠居の家に遊びに行きました。「ご隠居、ご隠居はいますか?」「おや、これは珍しい。誰かと思えば松さんかい。さあ、あがんな、あがんな」「はい、それではあがらせてもらいます。しかしご隠居は、いつもお若いですね」「いやいや、もう若くはないよ」「でも、五十四か五でございましょう?」「い…
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おっちょこちょいの男が昼寝をしていると、表の方からバタバタと足音がして、これまたおっちょこちょいの友だちが家に飛び込んで来ました。「おい、起きろ! 大変なんだぞ! 横町に、お前が倒れて死んでいるんだ。それなのに、全くお前は、よくもそんなにのんきな顔して」 するとそれを聞いた男は、すぐに飛び上がって、「何だ、…
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あるところに、貧乏な親子がいました。 貧乏でふとんもないので、寝る時はいつもござをかぶって寝ています。 しかし親父さんは、「息子よ。人前では決して、ござをかぶって寝ているなどと言うなよ。人前ではふとんで寝ていると言うんだ」と、いつも言い聞かせていました。
ある日の事、親子が隣の家へ遊びに行き、ふと親…
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字を習いたての男がいたので、近所の者がからかい半分に、「おい、字を習っているそうだな。それなら七と言う字を書いてみな」と、言いますと、男は筆と紙を手に取り、「お安いご用だ」と、まず一を引き、今度は縦に一を引き、そのまま左へすっと曲げました。 それを見た近所の者はゲラゲラと笑って、「馬鹿だな。七という字は…
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町内の若い者が二、三人寄り集まって、おしゃべりをしていますと、痩せた青白い顔の男が、「はあー、はあー」と、息を切らせて飛び込んで来ました。「たっ、たっ、助けてくれ~」 男は、ガタガタと震えております。
「どうした、どうした」 みんなが男を取り囲んで聞きますと、男は、「後ろから、まんじゅう売りがやって来…
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生まれつき背の低いのを、とても悩んでいる男がいました。 男は毎日、神棚に手を合わせては、「神さま、何とぞ背が高くなります様に、どうかお願いします」と、お祈りをしていました。
ある日の事、ついに男の夢の中に神さまが現れて、こう言ったのです。「お前の望みを、叶えてやろう。 目覚めた後、ご飯を一升(いっし…
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小助の家に、友だちの平六がやって来ました。「おお寒いな。こう寒くっちゃあ、やりきれねえな」「本当にな、寒くてかなわねぇ。どうだい、今夜あたりふぐでも食いに行くか」 小助が誘うと、平六は顔をしかめて言いました。「いやいや、ふぐはやめよう」「なんだお前、ふぐにあたる(→ふぐを食べて毒にやられるのを、ふぐ…
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むかしは、今の様に家の中に便所はなく、たいていは外にありました。
さて、ある男が急に便所へ入りたくなり、急ぎ足で便所へかけつけると、中から、「エヘン、エヘン」と、咳払いがします。 誰かが便所を使っている様なので、男は仕方なく隣の家の便所を借りようと行ってみると、この便所にも誰かが入っている様で、中か…
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「近頃はネズミが出て困っているんだ。かと言って、ネコは嫌いだし。いくらネズミ取りを仕掛けても、いっこうにネズミはかからないし。どうすればいいのか」 男が相談すると、物知りな男が言いました。「それなら良い方法があるが、ネズミの出る穴はどれだい?」「ほれ、あの穴から出入りするんだ」 男が部屋のすみの穴を指差す…
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京都へ商売に行く江戸の男に、物知りの男が注意をしました。「京へ商いに行くそうだが、くれぐれも油断するなよ。京の商人はみんな曲者で、とんでもない値段をふっかけてくるからな。だから京では、何でも値切ったほうが良いぞ。例えば二両の値段なら、本当は一両の品だと思え」「おお、では、その通りにしよう」 男は喜んで、…
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