日が暮れて、薄暗くなってきました。 すると奥の間から旦那が、「これこれ、長吉どん。用があるから早く来ておくれ」と、よぶ声がします。「はーい」 長吉は、あわてて走り出したひょうしに、そばにあったあんどんにぶつかり、あんどんの火を消してしまったから、あたりはまっ暗です。 それを見ただんなが、「まったく、いつもい…
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大阪の商人が、四、五人そろって、旅あきないに出ました。 品物をみんな売り尽くしての帰り道、みんなは一緒の宿に泊まりました。 商人たちは寝る前に、それぞれお金をかぎのかかる金箱(金銭・財宝を入れておく箱)に入れました。 そして、ふろしきに包んで、まくら元に置いて寝たのです。 ところが次の朝、目を覚ましてみると…
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長屋の男たちが、けち自慢をしておりました。「日本広しと言え、おれほどけちな奴はおらんだろう。何しろ一日のごはんのおかずは、ウメボシが一個だけだからな」 すると、別の男が、「それは何とももったいない。おれなんて、ウメボシを見るだけだ」「見るだけとは?」「ウメボシを見ていると、口の中につばがたまるだろう。そ…
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ある時、江戸の大川の橋を一人の男が通りかかりました。 男がふと川を見ると、人が水面に浮かんで川下へと動いているのが見えました。 不思議に思ったこの男は、さっそく近くの茶店の主人に尋ねました。「ついいましがた大川で、うつむけになって身動き一つせずに遠方まで泳いで行った人を見ましたが、どうやればあの様に上手に泳げる…
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あるところに、ひどく貧乏なお寺がありました。 その日の食べる物にも困った和尚さんは、(ここは思い切って、千手観音さまのお開帳(ふだん見せない物を公開すること)をやって人を集めよう)と、決心しました。 この観音さまは寺代々の宝物で、参詣(さんけい→神仏におまいりに行くこと)の人にも見せた事がありませんでした。…
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夜中に亭主は、何やら怪しい物音に目を覚ましました。 ゴシゴシゴシゴシ ゴシゴシゴシゴシ それは、のこぎりで壁を切り破っている音です。「ははあーん。さては泥棒だな」 亭主は起き上がると、壁ににじり寄って身構えました。 やがて壁の一部がガサッと崩れ落ちて、その穴から手がにゅーと入ってきました。 亭主はその手を、ギュ…
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表の涼み台で、隠居が二人向かい合って将棋をさしておりました。 すると、刀を差した浪人がやって来ました。 隠居たちを見ると、そばに座り込んで、しばらく熱心にのぞき込んでおりました。 そのうち浪人が、ちょこちょこと口を出しますので、「黙っておれ!」 一人の隠居が、ポンと扇子(せんす)で浪人の頭を叩きました。「!」 …
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むかし、あるところに大きな店がありました。 商売をしていれば誰でも少しは縁起をかつぐものですが、この店の旦那ときたら大の縁起かつぎです。 特に、『し』や『四』の付く言葉は、縁起が悪いといって絶対に使いません。 たとえば、お尻の事は、おけつと言うくらいです。 新しい小僧さんをやとう時には、必ずその事を言って、…
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あるところに、とっても貧乏な男がいました。 ある時、お金持ちの家に行って言いました。「カッパが釣れる良い場所を見つけました。
でも、エサに肉がいります。 カッパが釣れたらお礼を差し上げますから、肉をもらえませんか?」 お金持ちはカッパなら高く売れるとおもい、肉の固まりを貧乏な男に渡して言いました。「わしも、…
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ある仲の良い夫婦がいました。 夫婦はよく人の世話もしますし、商売にも精を出すのですが、どういうものかいつも貧乏でした。 女房は、ひどく心配して言いました。「これはきっと、あたしらの家に貧乏神がいるに違いないよ」「どうも、そうらしいな。よし、さっそく追い出してやろう」 そこで夫婦は生の杉葉を燃やして煙を出し、その煙を…
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