"夢幻庵 3月"の記事一覧

自分であがる

「待て、待ちやがれ!」 盗みが見つかって旦那に追われて逃げていた泥棒が、道の真ん中に大きく開いていた穴の中にドスンと落っこちてしまいました。「へん、ざまあみろ。これでもう逃げられないぞ」  追いかけて来た旦那が中をのぞいてみますと、それはかなり深い穴でした。  そこにちょうど、若い男がやって来…

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なりたての泥棒

 初めて泥棒に入る泥棒が、おっかなびっくり戸を開けて家の中に入ってみますと、何とこの家は空き家でした。 なりたての泥棒は、ホッと胸をなでおろし、「ああっ、よかった、よかった。これなら捕まる心配はない」  確かに空き家なら、泥棒する事は出来ません。 おしまい See You Again&n…

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やぶ先生のぐち

 やぶ先生が薬の調合を間違えて、あるお店の番頭(→従業員のリーダー)さんを死なせてしまいました。「この人殺しめ! 医者のくせに薬を間違えるとはどういう事だ! お上(→お役所)に訴えてやるから、覚悟しろ!」 お店の主人に怒鳴られたやぶ先生は、まっ青な顔になって泣いて謝りました。「どんなつぐないでもします。ですからど…

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剣術指南(けんじゅつしなん)

  《剣術、お教えいたします》と、書いたかんばんをかけてある、家がありました。 さっきから、かんばんをじっと見ていた、若い男が、つかつかと中に入っていって、「どんな流儀の剣術でもけっこうですから、わたくしに、剣術を教えてください」と、弟子入りを申し出ました。 中から出てきた、家の主人が、「さては、おまえさまは、外…

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文句を言いに

 高い薬代を取られているのに、ちっとも病気が良くならない旦那が小僧に言いつけました。「まったくあのやぶ医者め! 今まで倉が建つほどの薬代を払っているのに、ちっとも良くならないではないか! 小僧よ、くやしいからこれから医者の家に行って、うんと文句を言って来てくれ」「はい。承知しました」 小僧はすぐに家を出て行きまし…

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鉄びん

 ある家に古道具屋が来て、家のがらくた道具を買っていました。 ところがこの道具屋、昼寝をしていた親父さんのはげ頭をやかんと間違えていいました。「これは良い色つやのやかんですな。きっと値打ち物でしょう。ついでにそれも、お売りくだされ」 するとそれを聞いた親父さんは目を覚ますと、「いくら、頭がまるはげだからといっ…

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大泥棒の辞世

 ある年の事、あちこちで盗みを働いていた大泥棒が捕まりました。 そして大泥棒の死刑(しけい)の日、役人が大泥棒に尋ねました。「今まで世間を騒がせてきたが、お前の命も今日限りじゃ。何か言い残す事はないか?」「はい。やりたい事は全てやりましたので、これと言ってございませぬが、お情けを頂けるのでしたら、この世ヘの別れに…

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かぜのかみおくり

 むかし、町のやぶ医者たちが集まって、こんな話をしていました。「どうもこの頃は、ひまでひまで、困ったものだ」「さよう。こうもひまでは、そのうちに医者の干物が出来てしまうわい」「本当に。名医と呼ばれるお方でさえ、あまり客が来ないそうですから、とても我々ごときの、・・・おっと、これは失礼」「いや、構いませんよ。そ…

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あわて医者

 むかし、一人前の医者は脇差し(わきざし)と言う、短い刀を腰にさして仕事に出かけたそうです。  さて、あるところに、とても慌て者の医者がいました。 ある日の事、日頃から世話になっている旦那が急病だというので、医者は慌てて家を飛び出したのですが、あんまり慌てていたので、脇差しと間違えてゴマなどをすりつぶす、すりこ…

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つけ鼻

 江戸の赤坂(あかさか)に、鼻を治す事では日本一と言われた名医がいました。 この鼻医者のところヘ、怪我で鼻の欠けた男がやって来て、新しい鼻をつけてもらいました。「さあ、いかがでございますな」 医者の差し出したカガミを見た男は、大満足です。「うむ。これはけっこう」 そしてうれしくなった男は、友だちのところヘ自慢に行…

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