子どもが、つないであるウマの尻尾の毛を引っこ抜いて遊んでいました。 それを見た男が、子どもに注意をしました。「こらこら、そこの子ども。ウマの尻尾を、抜いてはいかんぞ」「おじちゃん、どうして?」「そいつはな、ちゃんと訳があるんだ」「ふーん。でも抜いたって、どうもないよ」「いいや、ちゃんと訳あるから、抜いてはだ…
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人通りの多いにぎやかなところに、易者(えきしゃ→占い師)が店を出していました。 その前を、今日はどういうわけか、大勢の子どもがこま回しをして遊んでいます。「まったく、いまいましい子どもめ。これでは商売のじゃまだ。どこかよそで遊べばいいのに」 易者が、にが虫をかみつぶした様な顔をして、子どもをにらんでおりますと、…
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貸衣装屋に、坊さんがやって来ました。「ご主人、ちと、赤いけさを貸してもらいたい」と、坊さんが頼むと、主人は、「へいへい、素晴らしく良い色のけさがございますよ。して、どちらへお出かけで」「うむ、明日、雨ごいをするのでな、雨降山(あめふりやま)へ」 それを聞くと、主人は、さっとけさを引っ込め、「雨ごいでは、…
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今はタクシーという便利な物がありますが、むかしにそんな物はありません。 でもまあ、「かご」という物が、いまのタクシーの様な物でしょうか。 これは、そんなむかしの話です。
ある男が急用を思い出して、かごに乗りました。「これ、かご屋。急用で急いでいるんだ。金はたくさん出すから、急いでくれ」「へい。では、しっかり…
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回向院(えこういん)という寺は、いつもは人がいないのですが、今日は不思議と、押すな押すなの人混みです。
ここを良く通る旅の男が、不思議に思って尋ねました。
「えらい人混みですな。今日はいったい、何の日ですか?」
すると、境内(けいだい→神社のなか)の男が答えました。「ああ、今日は、貧乏神の…
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むかし、湯島(ゆしま→東京都文京区)の高台に遠めがねを置いて、お客に見せておりました。 遠めがねとは、今の望遠鏡(ぼうえんきょう)の事です。
ある男が、この遠めがねを一生懸命にのぞいていましたが、急に手を前に突き出すと、何か拾う様な手つきを始めます。 その不思議な動きに、遠めがねの番人が男に尋ねました。…
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若い男が二人で歩いていると、道の上に手紙が落ちていました。 一人の男がそれを見つけて、「これは、ちり紙の代わりにちょうどよい」と、ひろって、ふところに入れようとすると、隣にいたもう一人の男が、「頼む。その手紙を、おれにくれ」
「ああ、いいが、一体こんな物、何にするのだ?」と、拾った男が聞くと、「しばらく田…
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江戸ではすもうが大人気で、両国(りょうごく)のすもう小屋は人気力士同士の取り組みで大変なこみようです。 そこへ、田舎からすもうを見に伍作(ごさく)という男がやって来たのですが、あまりの人に表からは入れません。「ちくしょうめ、表がだめなら裏だ」 伍作は裏へ回ると、犬の様に四つんばいになって囲いの中に入ろうとし…
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家を探して、うろうろしている人がおりました。「もし、ちょっとお尋ねしますが、このあたりに、福徳屋徳右衛門(ふくとくやとくざえもん)さまという人の家はありませぬか」 すると小僧は、「はあ、福徳屋徳右衛門。 うーん、聞いた事がある名前だが、どこだったかなあ? ねえ、番頭(ばんとう)さん、知りませんか?」「いいや。 しか…
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あるところに、とてもあわてん坊な男がいました。 この男、お風呂に入る時にうっかりして、ずきんとたびを脱がずに入ってしまいました。 それを見ていた人が、男に注意しました。「これ、そこの人。風呂に入るなら、たびを脱ぎなされ」 男は言われて、自分がたびを脱ぎ忘れた事に気づきましたが、今さら脱ぐのも恥ずかしいと思い…
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侍が住吉神社(すみよしじんじゃ→大阪の住吉)の参道(さんどう→神社に参拝するためにつくられた道)で、しゃっくりが出て、止まらずに困っておりました。「誰か、しゃっくりを止めてくれぬかのう。礼はするのだが」 すると、道ばたに寝ていたこじきが、むくむくと起き上がり、いきなり、「おのれ、親のかたき、覚悟しろ!」と、…
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ここは、四条河原(しじょうかわら)の橋の下です。 橋の下では、、こじきたちが集まっておしゃべりをしていました。「近ごろは、どうだい?」「そうだな。役人どもがだらしないから、米や油が高くなって町の人は困っているそうな」「そうらしいな。町の人たちも、可愛そうに」「それに比べりゃ、こちとら米を買ったり、油を買った…
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むかし、一人の役人が罪人の坊主をごそうするための旅をしておりました。 途中の宿屋で、この坊主が言いました。「お役人さま。もうすぐ江戸でございます。お世話になったお礼に、これでもどうぞ」 坊主は自分のお金で酒を注文すると、役人にたらふく飲ませて役人を酔いつぶしてしまいました。 そして坊主は役人の頭の毛を丸坊主にし…
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むかしの事でございます。 お白州(しらす)といって、罪人(ざいにん)が裁判(さいばん)を受けるところがありました。
ある時、大勢の罪人たちがお白州に並んで、お裁きを受けていると、罪人たちのあたりで、「ブウゥーーーッ!」と、大きなおならの音がしました。「今の音は何の音だ?! めし取ってまいれ」と、上役人が…
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酒に酔った貧乏侍が、あっちへふらふら、こっちにふらふらと歩いていました。 それを子どもたちが見つけて、「やーい、酔っ払い。やーい、酔っ払い」と、からかいました。「なっ、なんだ? 酔っ払いが、どこにいるんだ? うん、おれの事か? おれは酔っているが、酔っぱらってはおらんぞ。 だいたい、おれの金で飲んで、おれが…
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ある武士が、田舎道を歩いていました。「ああ、疲れたわい」 武士が一休みをしていると、ちょうどそこへウマを引いたお百姓が通りかかったので、武士はそのお百姓のウマに乗せてもらうことにしました。 しばらくいくと、武士はむしょうにお腹が痛くなって、「プウー、プウー」と、おならをしてしまいました。 そのおならのくさい…
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長い間、山里から出たことがないおじいさんがいました。 ある日、おじいさんが家族に言いました。「生きているうちに、一度、京の見物をしたいもんじゃ」 すると、家族はお金を工面して、おじいさんを京都見物に出してやる事にしたのです。「いいかい、おじいさん。 京の町は、どれも家のつくりが似ていますからね。…
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あるところに、サルにそっくりな顔の殿さまがいました。 ある時、殿さまが家来に尋ねました。「おい、三太夫(さんだゆう)。 わしが歩いていると、見る人、見る人が、わしの事を『サルじゃ、サルじゃ』と言うが、わしの顔は、そんなにサルに似ておるのか?」 すると三太夫は、言葉を選びながら言いました。「それは、とんでもな…
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ある殿さまの家来に、大変気のきく男がいました。
殿さまはその男の事を、客が来るたびに自慢します。「あの男の気がつくこと、気がつくこと。 朝起きると、すでに洗面の用意が出来ておる。
そして顔を洗っている間に、茶をくんで来てくれる。
たばこを吸いたいと思えば、目の前に、すーっと、たばこが出てくる。
…
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むかし、みこし入道という、大男の化け物がいました。 人が夜道を歩いて行くと、後ろからニューッと首を伸ばして、頭ごしに見越してニタニタと笑うのです。 それだけならよいのですが、みこし入道に見下ろされると、その人の命が短くなると言われています。
さて、ある男が友だちからその話を聞くと、「おれが、みこし入道を…
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