むかしむかし、広い田んぼを持った百姓家がありました。 そこの家では、毎年、夕顔やウリを作っていますが、ある年の事、この畑に泥棒が入るようになり、夜になるとせっかく育った夕顔を盗んでいくのです。 それがあまりにも続くので、たまりかねた主人はある晩、寝ずの番をする事にしました。 そして主人が物陰にかくれてい…
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むかしむかし、十歳になる文四郎(ぶんしろう)という村の子どもが友だちと浜辺で遊んでいると、浜の松林の中にある地蔵堂の裏から、小さなヘビがたくさん出てきました。「わぁーっ! ヘビだ、ヘビだ! 殺してしまえ!」 文四郎は叫んで、棒切れを手にヘビを追いかけました。 ほかの友だちも追いかけましたが、ヘビはすばやく岩…
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むかしむかし、ある村はずれに、大金持ちの家と貧乏な家がありました。 ある、吹雪の夜です。 白い着物を着た美しい娘が、お金持ちの家の戸を叩きました。「わたしは旅の者ですが、この吹雪で困っております。どうか、今夜一晩、泊めて下さいませんか?」 すると金持ちの主人は、「はん。お前がどうなろうと、わしの知った事か」と、ぴし…
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むかしむかし、江戸(えど→東京都)に有馬(ありま)という殿さまの屋敷がありました。 ある年の春の夜、殿さまが便所(べんじょ)へ行っての帰り、おぼろ月をながめながら渡り廊下を歩いていると、何者かが後ろからかけよってきて、いきなり肩に手をかけました。「何者!」 殿さまがふりむいた時、相手は両手で殿さまの…
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むかしむかし、元和二年(1616年)のある雨の降る夜、一人の侍が久々利城へと急いでいると、「助けてください。悪人に追われています」と、一人の美しい女の人が駆け寄ってきたのです。(夜だと言うのに、こんなところへ女が一人でいるのは怪しい) そう思った侍は、刀に手を掛けると用心深く腰を落としました。 すると、…
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むかしむかし、京の都のある屋敷(やしき)に、娘がくらしていました。 父と母にかわいがられて育ちましたが、もう、二人とも死んでしまっていません。 娘はお嫁にいくこともなく、屋敷をまもっていましたが、ある時、重い病気にかかって死んでしまいました。 そこで親戚(しんせき)の人たちがお葬式(そうしき)をすること…
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むかしむかし、あるところに、とても仲の良い二人の兄弟がいました。 この兄弟は、顔も性格も食べ物の好みもそっくりです。 ある日の事、二人は一人の女の人を同時に好きになってしまい、その女の人と結婚したいと思いました。 食べ物なら二人で分ける事も出来ますが、女の人ではそうはいきません。 その為に二人の仲はこの…
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むかしむかし、江戸の町に、駄菓子(だがし)をつくって売っている駄菓子屋がありました。 この店では、色々ある駄菓子の中でも、『ねぢがね』と呼ばれる、ねじり菓子が大人気です。 そこでこの駄菓子屋の主人のじんべえは、『ねぢがね屋じんべえ』と呼ばれていました。 このじんべえは、けちでも有名で、もらう物なら馬の食べ残…
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むかしむかし、伊勢の海辺の村に、みよという娘の海女がいました。 この伊勢の海には、『ともかづき』と呼ばれるお化けがいて、海女たちから恐れられていました。 そこでみよが海女になったばかりのとき、先輩の海女たちからこう教えられたのです。「いいかい、みよちゃん。ともかづきは、あたしたちと同じ海女の姿で現れて、『ア…
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むかしむかし、可児川と言う川の近くで、お酒を作って売っている酒屋がありました。 この酒屋の『恵土の華』というお酒は、とてもおいしいとの評判で、遠くから買いに来る人も多くいました。 ある日の事、この酒屋に身なりの立派な若い侍がやってきました。「ごめん。これに酒をたのむ」 そう言って侍が差し出した徳利は、侍の身…
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むかしむかし、越後の国(えちごのくに→新潟県)の関山(せきやま)という村には、魚野川(うおのがわ)という川があって、この川にはいつも、仮ごしらえの橋がかかっていました。 なぜ、仮ごしらえかというと、この川の流れが早いので、ちょっと大雨が降っただけでも、橋が流されてしまうからです。 それでいつも、仮ごしら…
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むかしむかし、とても貧乏な一家が住んでいました。 ある日、お母さんは十歳になったばかりの娘のお春に言いました。「お春。わたしたちはとても貧乏だ。田も畑もみんな長者さまの物で、わたしが朝の日の出より早く働いて、夜に星が出るまでがんばっても、暮らしは、ちっとも良くならねえ。それに、お父さんも無理がたたって寝…
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むかしむかし、伊豆七島の八丈島(はちじょうじま)は、罪をおかした人たちが島流しにされたところでした。 ある年の事、この島に放火の罪で、お豊という十五歳の少女が江戸から船で送られてきました。 放火は大罪なので、五年、十年と、お豊の島でのくらしが続きました。 島には毎年一度だけ、江戸から御用船(ごようふね)とよ…
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むかしむかし、京の都に、在原業平(ありわらのなりひら)という有名な歌人がいました。 六歌仙(ろっかせん→平安時代を代表する、六人の和歌名人)の一人で、また、たいそうな美男子でしたから、女性にも、ずいぶんともてたそうです。 この業平が若い時、二条の妃を館から誘い出そうとして、妃の兄弟に見つかってしまいまし…
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むかしむかし、ある山里の娘が、町へ働きにいきました。 店の人たちにも可愛がられ、とてもよく働く娘でしたが、三年もたたないうちに胸の病(やまい)にかかってしまいました。「約束の給金(きゅうきん)の他に、これは薬代だよ。病が治ったら、またきておくれ」 店の主人にいわれて、娘はなくなく山里へ帰りました。 娘のとなりの…
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むかしむかし、いく人かの漁師が船にのりこんで、とおくの海へカツオをとりにでかけました。 ところがめざす海へつかないうち、夜になってしまいました。 帰ろうにも向かい風が強くて、船は思うように進めません。「おや、あれはなんだ?」 見張りの男が、向かい風に逆らいながら近づいてくる船を見つけました。 船べりにも、ほづな…
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むかしむかし、江戸(えど→東京都)の四谷(よつや)というところに、喜右衛門(きえもん)という小鳥の店をしている男がいました。 めずらしい小鳥がいるというので、わざわざ遠くから買いにくるお客もあって、店はなかなかに繁盛(はんじょう)していました。 あるとき、上品な身なりの侍が店にやってきました。「うむ、色つやもよ…
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むかしむかし、あるところに一人の商人がいました。 この商人はとても商売が上手で、あちこちの村をまわるたびに、大もうけをします。 あるとき、お金のいっぱい詰まった行李(こうり→旅用の荷物入れ)をかついで、町へ品物を仕入れに出かけました。 その途中に立派なお宮があると聞いたので、商人はお参りにいくことにしました。 …
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むかしむかし、ある藩(はん)に、ご城代役(じょうだいやく)をつとめている侍がいました。 この人は大変、風流(ふうりゅう)を好む人です。 ある日の暮れ方のこと、近くの川原をぶらりぶらりと歩いていると、畑の中に何か黒い物が立っています。(はて? とうろうのようであるが)と、そばへいって見ると、古びてはいます…
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むかしむかし、あるところに、とても腕のいい狩人(かりゅうど)がいました。 狩人は毎日、犬をつれては山に入って、えものをとっていました。 ところが、ある日のこと。「おかしいな。きょうは、ちっともえものがおらん」 狩人はえものをもとめて、いつしか山奥に入りこんでいきました。 すると、日がくれてしまいました。…
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