"宇治拾遺物語 ③"の記事一覧

宇治拾遺物語【休題閑話】

第九巻の(渚の独り言)後記 コメント  100話を突破した前巻が終ったことで、何か区切りがついてしまい、ちょっと腑抜けた感じで、この九巻は、終えるのに時間がかかりました。 根気を保つのが、なかなかたいへんです。 第9巻の後記この巻は、時代風景がぼんやり想像できるような話が多かった気が…

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巻九 (113)博打、聟入の事

 むかし、ばくち打ちの若い子供が、 目と鼻とが一カ所に集ったような、この世の者とも思われない顔をしていた。  両親は、こんな息子が、どうしたら世間で生きて行けるだろうと悩んでいたが、 あるとき、長者の家に仕える娘から、 長者の妻が、「顔の良い婿をとりたいものだ」と口にしていることを聞いた。  それで…

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巻九 (112)大安寺の別当の女に嫁する男、夢見る事

 今は昔。 奈良の大安寺というお寺で総代・別当の地位にあった僧侶の娘に、 都で蔵人を勤める貴族が、忍んでいた。 その蔵人は、娘にかなりの思いをかけていたから、 時には昼間にも、娘の部屋で休むことさえあった。  さてあるとき、その蔵人が昼寝をした折、ある夢を見た。  ――急に、別当の家の者が、主人…

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巻九 (111)歌よみて罪を許さるる事

  今は昔、大隅守にあった人が、任国で政治を行っていたとき、 地元の役人である郡司が働かないので、「召し連れて来い。処罰するぞ」 と言い出した。  以前にもたびたび不始末があって、 その罪に応じて重かったり軽かったり、処分してきたが、 一度ではなく何度も不行跡があるので、ここで厳しく処罰を加えようと…

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巻九 (110)恒正が郎等、仏供養の事(下)

  「こちらへ参れ」 というと、まさゆきが庭の中程へ出てくるので、恒正が、「今日あの講師は、なに仏を供養することになっているのか」 と尋ねたところ、「どうして、わたくしがそれを知っていましょう」 と答える。 「どういうことだ。では誰が知っておる。 そもそも発願したのはおまえではない別人で、 おま…

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巻九 (110)恒正が郎等、仏供養の事(上)

昔、兵藤大夫恒正(つねまさ)という者がいた。 かれは筑前国の山鹿庄というところに住んでいたが、 あるとき、彼の屋敷へ旅の一行がやって来て、しばらく滞在することとなった。  その折、恒正の家来の、まさゆきという者が、仏を造立し、供養しようというので、 大勢が恒正の屋敷へやって来て、ものを食い、酒を飲んで騒ぎ始…

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巻九 (109)くうすけが仏供養の事(下)

  やがて講師がやって来ると、くうすけは、自ら客間を掃除しながら、 この講師を迎えた。「これは、どうしてそのようなことをしているのですか」 と、講師が驚いて言うと、「何故こうしないでいられましょう」 と、くうすけが弟子入り志願の名刺さえ渡すから、 講師の僧侶は、「これは、思いもよらぬことです」「いいえ…

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巻九 (109)くうすけが仏供養の事(中)

   そんなこんなで、仏師は、仏を作り上げた。 仏に御眼を入れるなどして、「では、お礼の品をもらって帰ります」 と言い出したから、 くうすけは、どうしてやろうかと考えを回して、近くに小女が二人いたので、「今日、仏師に、例のものを与えようと思う。何なりと取って参れ」 と言って、部屋から出した。 そし…

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巻九 (109)くうすけが仏供養の事(上)

  くうすけという、強力自慢の法師がいた。 彼は身内の僧侶もとで修行していた。  さて、ある時くうすけが、「仏をつくり、供養しようと思う」 と言い出したから、それを聞く者は、 仏師に何か物を与えて作らせるのだと思い、仏師を家に呼んでやった。  くうすけは、「三尺の仏をお造りしようと思う。御礼として…

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巻九 (108)越前敦賀の女、観音たすけ給ふ事 (4)

   翌日。 屋敷に残っていた者たちが、「今日は殿のお戻りがあるだろう」 と待っていると、申の時すなわち夕方四時頃に、到着した。  例の娘が、その帰着や遅しとばかりに、多くのものを用意して届けるので、 女も何ともいえず、頼もしい思いになる。 やがて例の武士が、女のもとへ上ってきて、 あれこれ話をして、と…

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巻九 (108)越前敦賀の女、観音たすけ給ふ事 (3)

   そこへ折しも、昔、父親の台所で使われていたという端女の娘が、やって来た。 台所の端女に娘がいたことは知っていても、 すでに婿を迎えて、無難に暮しているものだと聞く程度で、 往来など絶えてなかった娘である。  そういう娘が唐突にやって来たので、 屋敷の女は、誰であるのか分らず、「どなたが来たので…

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巻九 (108)越前敦賀の女、観音たすけ給ふ事 (2)

    娘がのぞき見ると、一行の主人は、三十歳ぐらいの、 実にうるわしい男であった。 家来も二三十人、下人たちもあわせれば総勢で七八十人はいると思われた。  板の間にそのまま座っているので、娘は、むしろや畳を差し上げたいと思ったが、 そんなものは家に無く、恥ずかしさに小さくなっていると、 旅人はやが…

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巻九 (108)越前敦賀の女、観音たすけ給ふ事 (1)

 越前国の敦賀というところに、とある夫婦が住んでいて、 どうにかこうにか、ひと家族、満足できるだけの生活を送っていた。  この二人の間に娘が一人いて、ほかの子は無かったから、 この娘をかけがえのないものとして、たいへんかわいがっていた。  やがて二人はこの娘を、自分たちの存命中に何とかしておこう…

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巻九 (107)宝志和尚、影の事

 昔、唐の国に、宝志和尚という聖がいた。 まことに尊い僧侶であったため、時の皇帝が、「かの聖者の姿を描かせよう」 と、絵師三名を派遣することを決められ、「もし一人だけであれば、描き損なうこともあるだろうから」 と、三人で直接、面会して描き写すようにと細かく指示された。  そして三人が皇帝からの命令と、今回…

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巻九 (106)滝口道則、術を習う事(下)

 さて、奥州へ赴き、金を受けとっての帰路。 道則は、また信濃の郡司のもとへ逗留することになった。  土産として金や馬、鷲の羽根などを多く与えたところ、 郡司はたいへん、この上もなく喜んで、「これはこれは、何と思し召してこれほどしてくださるのか」 それで道則が近くに寄って言うには、「笑止なことで…

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巻九 (106)滝口道則、術を習う事(上)

 昔、陽成院が帝の位にあられた時のこと。 滝口武士の道則は、宣旨を賜って陸奥へ下向する途中、 信濃国ヒクニというところに滞在した。 郡司の屋敷に宿をとり、そこで歓待を受けたが、 夜になると郡司は郎党を引き連れ、出かけてしまった。  残された道則は、何となく寝られず、ふと起き出して辺りを歩いてみると…

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宇治拾遺物語 【休題閑話】

第八巻の(渚の独り言)後記 コメント この第八巻で100話を突破。まことに、めでたい限りですが、実はまだ半分終ったに過ぎず、残り93話、ひいひい言いながら、続けるしかありません。 第8巻の(渚の独り言)後記・印象的な話 個人的に、102話の「敏行朝臣の事」が興味深かったです。なぜ、この敏行の死…

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巻八 (105) 千手院僧正仙人に逢う事

   むかし、比叡山西塔の千手院というところに、 静観僧正という座主がお住まいになっていた。 夜が更けてから明るくなるまで、尊勝陀羅尼経を読み通すことを続けて、数年。 その声を聞く人は、これをたいへんに尊んでいた。  さて、陽勝という仙人がある晩、 空を飛んでいて、僧正の宿坊上空を通り過ぎよう…

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巻八 (104)猟師、仏を射る事

  昔、愛宕の山に、長年修行を続ける聖がいた。 修行を続ける間、一度も宿坊を出たことのないほどの行者であった。  さて、その宿坊の西に、猟師が住んでいた。 猟師はこの聖を尊敬し、いつも訪れては、何かしら献上していた。 あるとき、この猟師がしばらく訪れることができず、 久しぶりに食事袋に干飯などを入れ…

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巻八 (103)東大寺華厳会の事

    これも今は昔、東大寺で恒例の大法会が開催された。 華厳会(けごんえ)、という。  大仏殿の中に高座を立てて、講師の僧侶がそこへのぼって儀式を行うが、 途中で講師が、堂の後ろ側からかき消えるようにして、外へ逃れ出る場面がある。  古老の伝えるところによると、「この御堂が建立された当初…

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