"夢幻庵 ③"の記事一覧

じしゃく宿

 宿場町(しゅくばまち→街道ぞいの宿屋が集まったところ)の町はずれに、貧乏な宿屋が三軒ありました。 たいていの旅人はそこを通り過ぎて、大きな宿屋に泊まってしまいます。「何とか、はんじょうする方法はないものか?」と、一軒の宿屋の主人は、考えていましたが、「おおっ! 良い事がある」と、ポンとひざを叩きました。 ど…

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殿さまの値打ち

 お城の殿さまは、じまん話が大好きです。 今日もえらい坊さんに、法話(ほうわ→仏に関するはなし)を聞きながら、「のう住職、余の値打ちを金にすればどのくらいかのう?」「はあ、およそ、一両ばかりかと存じます」「なにっ! ばかを言え、この着物だけでも一両はするのだぞ」「はい、ですから着物の値段だけ、おつけしたのでご…

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お前じゃない

   釣りに行って、小判を五十両も釣ったと聞いた八五郎(はちごろう)さん。  さっそく、釣りざおをかついで出かけました。  舟を沖にこぎ出して、  釣り糸をたれると、  すぐに大きくて立派なタイがかかりました。 すると八五郎、針を抜くと、ポンと海へ投げ返してしまい、 「ええい、お前じゃない」 …

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みょうが宿

 ある宿屋(やどや)の主人と女房が、こんな相談をしていました。「お前さん、今夜のお客さんは、大そうお金持ちだね。 あのふくれた財布を、うっかり忘れてくれればいいけどね」「そうだなあ。 何とか忘れ物をするような、よい方法はないものかなあ? ・・・そう言えば、何でも、やたらとみょうがを食べさせると、忘れっぽく…

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飛脚

 むかしむかし、江戸で大火事がありました。 その知らせを持った飛脚(ひきゃく)が、東海道(とうかいどう→東京から京都へつながる道)を走りぬけて行きます。  同じころ、大阪では大水(おおみず→水害)が出て、この知らせを江戸に伝えるための飛脚が東海道を走ってきます。 江戸の飛脚と大阪の飛脚が途中ですれ違うと、二…

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死んだのは病人

 むかしから江戸っ子は好奇心(こうきしん→知りたがりや)おうせいで、人ごみがあると、とにかく集まるのです。 ある町かどで大勢が集まって、そうしきをしていました。「はあ、立派なもんだ」 みんなで感心していると、通りかかった人が尋ねました。「いったい、どなたが死にましたので?」 すると、集まっていた江戸っ子の一人…

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にくまれ口

 金持ちの男が出かけると、途中で貧乏な友だちに出会いました。「よっ、貧乏神(びんぼうがみ)、どこへ行くんだ?」 金持ちの男がこう言ってからかうと、相手の男はすました顔で、「いま、お前の家へ行くところだ」と、言って、そのまま行ってしまいました。「ちえっ、いまいましい事を言う奴じゃ」 金持ちの男はふゆかいになって…

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ネコの名

 子どもたちが集まって、おしゃべりをしています。「この間、ネコをもらったけど、名前がまだないんだ。  ほかのネコに負けないような強い名前をつけようと思うんだけど、  何ていう名前がいいだろう?」「そりゃあ、青空とつけるといいよ。青空は大きくて気持ちがいいからね」 「いやいや、青空は雲にはかなわな…

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「おや、財布が落ちている。こいつは、いい拾い物だ」 八つぁんは、さっさとふところにねじ込んで家に帰って開けてみると、なんと百両(→七百万円ほど)もの大金が入っております。「こいつは、誰かに見られたら大変だ! そうだ、庭に穴を掘ってうめておけば安心だ」 さっそく庭に穴を堀り、百両をうめてから、その上にクソをたれ…

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釣りの先生

《つり、おしえます》と、書かれたかんばんを見つけた男が、頼み込みました。「どうかわたしを、弟子にしていただけますか?」「それはかまわんが、その前に見どころのあるなしを調べねばならん。 この釣りざおを持って、二階へあがって糸をおろしなさい」 男が言われた通りにすると、先生はおりてきた糸の先をちょっと引っ張りまし…

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ぶしょう比べ

 何をするにも、めんどうがる男がおりました。 ある日、観音(かんのん)さまにお参りに行き、途中で腹が空いたので茶店に寄りましたが、さて、食うのがめんどうくさい。 そこでにぎり飯にしてもらい、ふところに押し込んでもらいました。 腹が減ったまま道を歩いていますと、向こうから腹が減った様な顔をした男が、ずり落ちそう…

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笑い事ではない

 泥棒が、ひどく貧乏な家に入りました。 どこを探しても、何も取る物がありません。 その家の主人は、ござのふとんをかぶってタヌキ寝入り(→寝たふりの事)をしています。「ええい、まったく。こんなに何もない家は、初めてだ!」 泥棒が文句を言うと、寝ていた主人が思わずくすくすっと笑いました。 すると泥棒は、「笑い事で…

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わしにもいっぱい

 夜遅く、台所の方からごそごそと音がします。「ははーん、さては、泥棒だな」 この家の主人、武芸(ぶげい)には自信があります。 主人は台所にいた泥棒に飛びかかると、しばらくして泥棒を取り押さえました。「おおっ、えっ、えらく、骨をおらせやがって」 主人が荒い息をしながらいうと、そばから女房が言いました。「お疲…

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ごみ

 運の悪い泥棒もいるものです。 こんな奴は、たいていおっちょこちょいな奴で、まだ日がくれたばかりだというのに、もう泥棒に入りました。 あんのじょう、たちまち家の主人に見つかり、あわてて逃げ出しました。 ところが家の者も、逃がすものかと追いかけてきます。 とうとう川に追い詰められた泥棒は、仕方なく川の中へド…

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おなら

 風の強い、ある晩の事。 泥棒がえんの下にもぐり込んで、みんなが寝静まるのを待っていました。 だんだん風が強くなってくると、表の戸に風が当たって、「ぶううー、ぶううー」と、鳴りました。 それを聞いた亭主が、「今の音は、お前のおならか?」と、奥さんに聞くと、奥さんは怒って言いました。「まあいやだ。わたしがいつ、おな…

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だくだく

 ひょうたん屋のごん三郎のところに、泥棒が入ろうとしています。 するとそれに気づいたごん三郎が、戸の内側でヤリをかまえて泥棒が来るのを待っていました。 今か今かと待ちかまえていますが、どうしたわけか、泥棒はなかなか入ってきません。(・・・おせえな) いいかげん待ちくたびれた頃、やっと戸が開いて泥棒が入ってきま…

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しらみ

 河原で四、五人のこじきが集まって、ひなたぼっこをしています。 年寄りのこじきが、いつまでも寝ている若いこじきに言いました。「今日は、いい天気だぜ。お前も寝てばかりいないで、日なたに出てしらみでも取りねえ」 すると、若いこじきが言いました。「大丈夫だ。しらみなんかいねえから」「おい、何を言ってやがる。ここ…

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こじきのほこり

 橋の下で、一人のこじきが目を回して倒れていました。 仲間のこじきたちは驚いて、「どうした、どうした。気分が悪いのか?」と、聞くと、「気分が悪いのではないが、ここ二、三日というもの、全く、おもらい物がないのだ。だからもう、腹が減って、腹が減って、とうとうぶっ倒れてしまった」と、言うのです。 そこで仲間のこじきたち…

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泥棒の泥棒

 一仕事を終えた泥棒が、隠れ家に帰ってきました。「今日は、うまくいったぞ」「おれも、すっかり腕前があがったわい」 めいめいがじまん話などしていますと、親分が言いました。「これから、分け前を決めるぞ。それぞれ、盗んだ物をここに出すんだ」「へい!」 泥棒たちは、盗んできた品物を残らず親分の前に出しました。 ところ…

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つもり泥棒

 ある長屋(ながや)に、貧乏な侍がいました。  食べるのがやっとなくらいの貧乏で、家の中には道具らしい物が何一つありません。 唯一あるのは、先のさびついた、そまつなヤリが一本だけです。 侍は、毎日ひまを持てあましていました。 あくびと貧乏ゆすりの繰り返しです。「そうだ。たいくつしのぎに、良い事を思いついたぞ」 侍は紙を…

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